大学生スタートアップがスケールせずに撤退した話

起業したのはもう2年近く前の話になりますが、資本金ほぼ0の学生スタートアップがスケールせずに終了した話。
廃業理由は財政的にではなく、フェーズ感的にSMBから脱せないと判断したためです。これを通して、財政的にマイナスにはなってません。
書き出すと永遠に終わらないので、かなりザックリと書きます。

事業内容
・家庭教師と顧客がマッチングするプラットフォームを作る
・世帯所得が少ない家庭(シングル世帯等)に格安で家庭教師の指導を届ける

スケールアウトに失敗した理由
・ガバガバなビジネスプラン
1ヶ月で顧客は20人は獲得できるはず、3ヶ月では50人まで拡大できるはず、アドテクドリブンで広告バンバン打てばそのうち顧客はつかめると思う
そんな何の根拠もないふわっとした事業計画を立てていた。

・マーケット分析が超雑だった
営業範囲に同業者が何事業者・何店舗あり、その価格設定や主なマーケティング対象は? 顧客獲得のチャネルは? 事業規模は? 顧客数は? (以下略)
スマホで片手間に調べたぐらいでした、はい。

・何はともあれ運転資金が無さすぎた
当時爆発的に伸びてた仮想通貨への、血を血で洗うようなスキャルピング等のデイトレードを主として、高レバレッジ投機でなんとか小銭を生み出した。
しかし、これは無念にも、事務所の家賃と無計画なネットアド・チラシ印刷により1ヶ月も経たず無くなった。
そしてその後は順調に赤字を掘った。

・乏し過ぎた人脈
家庭教師や塾業のスモールスタートの場合には、特に地方では人脈が命だ。例えば、顧客獲得では主婦層との幅広い人脈があれば、口コミが広がることで、次第に顧客を獲得できるだろう。
また、士業の先生と強い繋がりがあれば、税理士から経理関係で支えてもらい、行政書士からは法人登記の補助を、弁護士からは訴訟が起こる前の予兆段階からアドバイスを貰えるなど、大きな安心感を得られる。
僕らはそれが見事なまでに何もなかった。
まあ、仮に士業の先生方との繋がりがあっても、そもそも上記のように資金がなかったので、士業の先生方への委託料は払えず、意味はなかったが。。。

・独りよがりのアドバンテージ定義
・クレジットカード(Amex, JCB, VISA, Master, ダイナース)で月謝や入会金が払える
・月謝が他社に比べて安い

僕らの事業では主にこれを武器にしようとしていた。教育業界ではFintech導入が遅く、今だに月謝袋に現金を入れて集金している所も少なくない。そんな中で、私の個人信用でクレジットカード決済を導入していた。多分全国の教育業界でも、全銘柄のクレジットカードが決済できるところはそうないと思う。決済はSquareを介していたので、顧客のカード番号などもこちらで持たなくて良い点は、いい判断だったと思う。
しかし、カード決済の場合には手数料がVISAでは3.5%、JCBでは4%掛かっていた。ただでさえ利幅が低い当事業では、その手数料は死活問題で、更には毎月変動する月謝のカード決済は、特定商取引法の関係でかなりややこしかった。(とはいえ、カード決済を望む顧客がほぼいなかったので問題なかったが。。。)
また、月謝を他社よりもかなり安く設定していた。これは顧客負担軽減が目的であったが、利幅が低過ぎたことから、顧客負担軽減の前にこちら側の採算を取るのでやっとだった。

そして僕らは学んだ
私はこの一連の修羅場に満ちた起業で、経理財務関連に多少は詳しくなれたと思う(とはいえ、最終的な事業を通した純利益はゼロに等しい)。また、クレジットカード決済も、大学生の場合には自分が消費者として使うことはあっても、事業者側として顧客のカードを決済できる人は殆どいないのではないだろうか。特に、塾・家庭教師は特定商取引法特定継続的役務提供者に該当するので、決済がなおのことややこしい。ここら周りをちょっと詳しくなれたのは良かった。
私的に1番の収穫は、「雇われることって素晴らしい」「しっかりと専門性を身につけないと、起業してポシャる」と感じたことだ。

20歳の頃の私は、「サラリーマンで決まった時間に会社に行って、決まった仕事をするなんて無理! 起業して自由に生きていく!」と周りに宣言していた。しかし、上記を経験した23歳の私は、自ら望んで就活して、企業に就職する道を選んだ。
Jack maの言葉

If you’re 20 years old, please join a good company, and find a good boss to learn how to do business

にあるように、私自身は20代のうちはよい企業(私にとって成長環境に恵まれた企業)に入って、スキルを積む事が最善だと判断した。起業は後々でも遅くないし、むしろ戦闘力を上げてからの方が良いように思う。
起業した場合には、「初年度は赤字、年収0円も覚悟しろ」と言われるように、非常に経済的に不安定な状態になることが多いし、私自身も実際それを経験した。そのような状態では、「今のスキルで稼げるものを」と、目先の利益を追求するあまり、スキルアップのための時間が取りにくい。少なくとも私は、精神的に追い込まれすぎてそのような時間は取れなかった。
それに比べて、「よい企業」に就職すると、スキル値が高い上司・先輩や同僚から学ぼうと、必死でスキルアップを図りながらも、生活のためにお金を稼ぐことができる。「稼ぐ」というよりは、「頂く」と言った方が良いとすら思う。

確かに起業は楽しいし、自由だ。しかし、キャリア形成のかなり重要な時期で、かつ、ベンチマークが定まる20代前半において、就職せずに即起業という選択肢は、私には現実的ではなかった。